AppleのMDMプロトコルの進化
Apple は 2009 年、iOS 4 のリリースとともにモバイルデバイス管理(MDM)フレームワークを初めて導入しました。従来の MDM は、リモートでデバイスを管理するための リアクティブ(受動的)なモデルでした。一般的な流れは次のとおりです。
- デバイスを管理に登録する
- サーバーから登録済みデバイスへ構成プロファイルを配布する
- サーバーが定期的にデバイスへ問い合わせ(ポーリング)を行い、設定が維持されているかを確認する
このようなサーバーとデバイス間の頻繁な通信は、特に数千台規模のデバイスを管理する場合、MDM サーバーに大きな負荷をかける可能性があります。
リアクティブ型とプロアクティブ型の MDM プロトコル
Apple は iOS 15(2021年) で 宣言型デバイス管理(Declarative Device Management:DDM) という新しい管理モデルを導入しました。これにより、サーバーの負荷軽減とシステム全体の応答性向上が図られています。DDM では、管理処理の多くが デバイス側で実行されます。デバイスは設定変更を自律的に検知し、必要に応じて自ら対応します。
従来の MDM のように、サーバーが定期的に「変更があったか」を問い合わせる必要はありません。DDM では、デバイス自身が変更を検知し、
- サーバーへ通知する
- 自動的に修復処理を実行する
といった動作を行います。
DDM の 3 つのデータモデル
DDM は次の 3つの主要コンポーネントで構成されています。
- Declarations(宣言)
- Status(ステータス)
- Extensibility(拡張性)
Declarations(宣言)
Apple の DDM ドキュメントによると、
Declarations は、宣言型管理プロトコルを使用してサーバーが定義しデバイスに同期するペイロードであり、組織がデバイスに適用したいポリシーや管理メタデータを表します。
Declarations には 4つの種類があります。
コンフィギュレーション: パスコード要件、アカウント設定、画面ロック時間など、デバイスの具体的な設定を定義します。
アセット: デバイス設定に必要な情報を提供します。
アクティベーション: デバイスへ送信される設定データで、複数の設定を含めることができます。
管理: 組織名などの固定情報を表します。
ステータス
Status は、デバイスからサーバーへ送信される 状態レポートです。レポートには次のような情報が含まれます。
- バッテリー状態
- ハードウェアモデル(MacBook Pro、iPad Air など)
- OS 情報
- シリアル番号
- その他のデバイス情報
(詳細な一覧については、Status ドキュメントをご参照ください。)
拡張性 (Extensibility)
拡張性は、デバイスとサーバーが互いに通信し、新しい機能や対応状況を通知する仕組みです。
宣言型デバイス管理を利用すべき理由
DDM は IT 管理者が直接操作する機能ではなく、MDM ソリューションの提供者が製品に実装する技術です。しかし、DDM の導入により管理者とエンドユーザの双方にメリットがあります。
DDM によってデバイス管理は次のように改善されます。
- より自動化された管理
- より高い応答性
- より高い信頼性
また、DDM は従来の MDM を置き換えるものではありません。Apple の説明によれば、
宣言型管理は MDM コマンドやプロファイルと共存できる
つまり、DDM は既存の MDM 機能と 並行して動作する仕組みです。
まとめ
DDM によりデバイス管理はより簡単になります。より高度な管理戦略を実現でき、管理対象デバイスをより細かく制御できます。また、デバイスの状態をより正確に把握できるため、より積極的で正確な管理が可能になります。
さらに、多くの管理処理がデバイス側で行われるため、ネットワークやサーバーの負荷も軽減されます。
Apple は DDM がデバイス管理の未来であると明言しています。IT 管理者として必要なのは、自分たちが使用している MDM ソリューションが DDM を活用しているかを確認することです。